自分を助けるのは自分、と意識して骨盤底筋体操を続けています

本橋喜久雄さん(1946年生まれ)
農業

経過観察数年、前立腺がん手術へ

代々続く農家に生まれ、私で十代目になります。父も祖父もがんで亡くなっていますから、ある程度は覚悟ができていました。2013年だったかと思いますが、前立腺がんの初期、と診断された時もさほどショックはなく、「ああ、早く見つかってよかったな」と平常心で受け止めることができました。転移もなく、進行も遅い、ということで経過観察することになり、4~5ヵ月ごとに通院していました。

その間、頻尿になったり、おしっこが止まってしまったり、いろいろありました。いよいよ手術となったのは、2017年10月に撮ったMRIで、「前立腺がかなり肥大して膀胱を圧迫していますし、尿の出も悪いから、そろそろ…」と先生から勧められ、「それじゃ、お願いします」となりました。

当初は農閑期に手術してしまう予定でしたが、手術前の前立腺を小さくする薬がなかなか効かず、結局、2018年4月25日入院、27日に手術を受けました。農繁期真っ只中になってしまいました(笑)。

入院中も毎日行った骨盤底筋体操

手術前、先生から「3ヵ月は尿漏れがあります」という説明がありましたので、尿漏れに対する気持ちの準備もある程度はできていたつもりです。手術の前日には看護師さんが病室に来て、骨盤底筋体操を教えてくれました。写真付きの説明書も渡され、「体操でいくらかは尿漏れが軽くなりますよ」との説明でした。ただ、私にはちょっと難しかったです。「下腹に力を入れないように」と言われても、普段の仕事でお腹に力を入れて重いものを持っているせいか、どうしても力が入ってしまいます。それでも入院中は時間があるので、1日数回はやっていました。

5月10日に退院してから1ヵ月間は、紙パンツ(オムツ)で過ごしましたが、看護師さんから言われていた「オムツだと、尿がいつ出たか自分でわかりにくいです。そうすると脳も排尿を意識しなくなってしまいますから、しばらくしたら尿取りパッドにしてください」という言葉を思い出し、パッドに切り替えました。でも、どうしてもずれてしまいます。朝起きてみると、下着に滲み出していたこともありました。

手術後約1ヵ月半から徐々に尿漏れが改善

自分で思いついて、退院後、排尿時におしっこを出したり止めたりを繰り返すことをやっていました。排尿時は誰しもリラックスしていますよね。ですから下腹の力が自然と抜けているのです。そういう状態で出したり止めたりを繰り返します。もちろん、先生に相談しました。先生からも「男性はそれでもいいですよ」と認めてくださったので、自己流かもしれませんが、骨盤底筋体操と一緒にこれも続けました。今思い返すと、「早くよくなりたい!」という一心でした。

出したり止めたりを排尿時ごとに、また骨盤底筋体操を毎日続けるうちに、尿漏れは一日一日と少なくなっていきました。ズボンを脱いだ時の独特な匂いが薄れていくことでもわかります。紙パンツからパッドに切り替えた後、1週間くらいで普通のパンツでほぼ大丈夫になりました。重いものを不用意に持ち上げた時や、不意にいつもしない姿勢になると漏れてしまうことがありますが、予め脳に「これから重いものを持つよ」などと指令を出すようにすれば、これも起きません。今は外出の時、用心のために紙パンツを履いているくらいです。

やってみてどんどんよくなると自信もつきます。旅行もすでに2回行きました。体操は、今もずっと続けています。継続のコツは、自分で意識すること。自分で考えて実践していくしかないと思います。

自分の意識改革が大切

これまでに、頻尿も、おしっこが止まってしまうことも、尿漏れも体験して思うことは、“排尿”はものすごく大事だということです。

おしっこのことが気になっていると、旅行に行ってもトイレのことばかり考えて、同じ景色でも美しさを感じることができません。そのくらい人間にとっては大切で、気持ちまでも左右します。ですから尿漏れも、深刻に考えてしまうとおかしくなってしまいます。

私は自分の意識を変えることが大切だと思います。体操の継続も、“意識してする”。そして、「尿漏れは恥ずかしいことではない。病気なのだから仕方がない。漏れたら漏れていいのだ、漏れてもいいやー」という意識になること。私はそのように思います。

近所の人に「前立腺取ってどうなの?」と聞かれたら、「前立腺取ると、尿漏れになって、時々ズボンが濡れてしまうのですよ」などとありのままに話しました。そうすると、「たまに漏れるけど、いいかなー」と明るい気持ちになれました。

そのような考えで、農作業にも精を出しながら、今、毎日を元気に過ごしています。

骨盤底筋体操は今も続けている本橋さん。