このサイト内の「尿漏れ手術」とは、尿道括約筋の機能を代替するシリコーン製の機器「人工尿道括約筋」を体内に植込み、尿を漏れにくくする治療法を指します。
「人工尿道括約筋」は、体内に植込むことから、外からは見えず、使用していることは他者にはわかりません。
この治療法は、尿を漏らさないようにするー膀胱に尿を溜めるー上で、ストッパーの役割を担う尿道括約筋が上手く機能しない方が対象となります。
ただし、前立腺を取り出した後、しばらく経つと尿漏れが回復する可能性があるため、術後6ヵ月以上経過している必要があります。
(3分でできる尿漏れ相談シートでご自分の状態を確認してください)
手術は全身麻酔で所要時間は1~2時間程度です。
入院期間は数日~1週間程度です。
2012年4月より、保険適用となっています。
高額療養費制度も利用でき、年齢や所得に応じて5~15万円程度の自己負担となります。
米国で開発され、全世界に普及しており、今日までに40年以上、15万人以上の患者さんの治療に使用されています。
日本国内では、これまでに1,000件以上の治療が行われています。
海外の研究では、90%の患者さんが「尿漏れ手術」に満足していると回答。
仮にもう一度尿漏れを発症した場合、92%の患者さんが、人工尿道括約筋を再度植込むと回答。
96%の患者さんが、同様に困っている患者さんに勧めると回答。*
* Litwiller SE, Kim KB, Fone PD, White RW, Stone AR, Post-Prostatectomy incontinence and the artificial urinary sphincter:a long-term study of patient satisfaction and criteria of success. J Urol Dec 1996 V.156(6) P. 1975-1980
人工尿道括約筋は、患者さんが尿道の開閉を自分でコントロールし、
正常な尿道括約筋の機能を代替するものです。
すべて体内に植込まれ、外からは一切見えません。
材質はシリコーンで、3つのパーツで構成されています。
尿道に巻きつけて、尿道括約筋の機能を代替します。圧媒液(生理食塩水)により、尿道を圧迫して締めることで、膀胱に尿を溜めます。
陰嚢内に留置し、人工尿道括約筋を動かすスイッチとなる部分です。
カフ内の圧媒液を圧力調整バルーンに移動させて、カフを緩めることで、排尿可能な状態にします。
排尿時(コントロールポンプ作動時)に、カフから圧媒液が一時的に移動します。
尿意を感じたら、陰嚢内にあるコントロールポンプを、皮膚の上から3~4回つまむだけです。その後、尿が出ます。
尿道の状態と、膀胱に尿がどれくらい溜められるかを見ます。
X線で尿道を映し出し、尿道が狭くなって尿が流れにくくなっていないかどうかをチェックします。
膀胱に生理食塩水を入れながら尿が溜まった状態や、排尿している時の状態を再現し、膀胱の状態を調べます。
その他、合併症がある場合には適宜検査が追加され、尿漏れの原因を調べるとともに人工尿道括約筋を植込む際に、支障がないかどうかを確認します。
通常は、手術の前日に入院します。
全身麻酔(場合によっては腰椎麻酔)で、手術のみの所要時間は1~2時間です。
会陰部と鼡径部(一般的には右側)に切開を加え、人工尿道括約筋を尿道のサイズに合わせて植込みます。
多少の痛みはありますが、歩行を始めます。食事も摂れます。
尿道カテーテルを抜きます。
手術後初めてシャワーを浴びることができます。
入院から5~7日後、感染などの問題がないことを確認して、退院となります。
手術の創部(きずの箇所)の回復および人工尿道括約筋を身体になじませるため、6週間程度は作動させず、そのままにします。尿失禁は手術前同様に続きますので、手術前と同様の対処(尿取りパッド、オムツ、レッグバッグ等)が必要です。
外来または1泊日程度の教育入院で、人工尿道括約筋の作動方法を習い、使用を開始します。